親と教師がつくる学校

◇なぜ親が関わるのか?

東京賢治シュタイナー学校では、子どもたちにとって本当に必要な教育をつくり出していくために、子どもを真ん中において、教育と運営において親と教師が責任を持ち、親がそこを支えていくことを大切にしています。シュタイナー学校は言うなれば、親と教師がつくる学校なのです。ではなぜ、親が深く関わる必要があるのでしょうか?

東京賢治シュタイナー学校では、常に親たちが力を合わせて、工夫しながらさまざまな活動を生み出しています。すると、そこで学んでいる子どもたちは、親が積極的に学校づくりに取り組んでいる姿を見て、無意識に学びの大切さ、深さ、尊さを感じ、学ぶことの大きな意味を見出していきます。受け身で誰かにやらされているのではなく、自分から学ぼうとする子どもの姿勢はまさに、親たちのアクティブな取り組みの産物だと言ってもいいでしょう。

子どもたちは、大人の姿を見て、常にアクティブでクリエイティブな人間になりたいと無意識に感じ取ります。そして、大人になっても常に行動できる柔軟な心と身体を持ち続けていくのです。このように、親が学校に関わるということは、子どもに大きな教育的要素をもたらし、それは子どもの成長の助けになるのです。

卒業生で、「この学校では親の関わりを通して、『つくる力』をもらいました」と言った生徒がいました。これはまさに親の『つくる力』が子どもに移っていった結果です。子どもが一番学べるのは、親が労働をしている姿です。実際に労働をしている姿に子どもの目は自然にいくようにできているのです。本来の人間が行ってきた農業や左官といった何かをつくる仕事を、親を通して身近で見ることは、子どもにとって「これこそが仕事なんだ」という体験として深く浸透していきます。

それだけではありません。親が学校づくりに関わることは、親自身の学びや成長にもつながります。子どもたちのために仕事をしていくことの喜びや幸せを感じながらも、一方では、関わる中で親同士がぶつかり合ったり、教師とうまくいかなくなったり、ときには今までの自分自身を壊すような体験をしたりと、泣いたり笑ったりの日々が続くことがあります。

同時に、一旦壊してしまったものを新しくつくり直せるのも、この関わりの中でしかないということも学んでいくことになるでしょう。その繰り返しの中で、親が親として、大人として成長し、学校は親が動くエネルギーを糧にして、生き生きと毎日新しく生まれ変わっていきます。これが学校に関わるすべての親たちと、学校そのものが成熟していくということなのです。親にとってもここは学校です。せっかく授業料を払うなら、子どもだけでなく、自分たちも一緒に学ばなくてはもったいないはず。関わるなかでいろいろなことを学びながら、親も成長し、学校も支えられることで、ともに安定して大きくなっていくはずです。

子どもたちにとって意味を持つ、学校として成長していく取り組みに終わりはありません。学校の創設から20年が過ぎ、時代の流れとともに学校と親の関わり方も変化してきました。今、あらためて言えることは、どの時代も親たちの働きがなかったら、この学校は存在し続けることはできなかったということです。

そしてこれからも、親が関わらなければ学校の未来はありません。学校づくりに親がしっかりと関わっていくことが、次の時代を切り開いていくことなのです。

◇どう関わるのか?

親の関わり模式図
…日々、子どもと直接触れ合い、関わることで充実した教育を行う「手」。
教師会はこの重要な役割を担います。

…教師をしっかりサポートし、子どもが安心してこの学校で学べるように、縁の下の力持ちとして積極的に働き、この学校の運営を支える「足」。
親は各種委員会やチーム活動等を通して、この重要な役割を担います。 

…今だけでなく、その先の未来も見据え、安定した学校運営を考える「頭」。
親と教師の代表からなる理事は、この重要な役割を担います。

…手(教師会)、足(親)、頭(理事)をつなぐ「体」。
親から選出されるクラス役員はクラスづくりという重要な役割を担任教師と協力しながら担います。13Cとは、幼児部から12年生までの13のクラスを表しています。各学年から選出された13C役員は、学校全体の縦のつながりを意識しながら、隔月でさまざまな議題について、教師会・理事を交えて話し合いを行う重要な役割を担います。

学校には多種多様な仕事があり、親の関わり方もさまざまです。
クラスの中で行う仕事もあれば、クラス単位で学校に関わる仕事もあります。
もうひとつは親の得意なこと、やりたいことから関わっていく仕事です。

たとえば、IT関係が得意な人はホームページをつくったり、広報関係のスキルがあればそれを生かしたり、料理が得意な人はドイツからの先生方に食事をふるまうこともあります。それ以外にも、大工仕事が得意だから床の張り替え、植物が好きだから校庭の草花の手入れ、というように、自分のスキルを活かして関わっていくことができます。

いつ来てやるかというスケジュールも、基本的にはその人に任せられています。子どもの送り迎えの小さな時間をつかって花に水をあげたり、剪定したりする人もいて、関わる時間もそれぞれが自分で生み出し、自由に関わっていくスタイルです。

当然、仕事をしていて学校にまったく関われない人もいます。それがいけないわけではありません。そういう人は普段は関われなくても、長い休みに入るときに学校のそうじをするとか、スノコをつくるとか、下駄箱にペンキを塗るなど、軽く手伝える仕事もたくさんあります。関わりに差があるのは当たり前です。その前提でお互いの状況を理解し合い、それぞれができるところでやれることをすればいいと私たちは考えています。

「親が関わる」と聞くと、めんどうだと感じる方は多いかもしれません。ただ、一つ言えることは、現在この学校に子どもを通わせている親たちで、学校に関わることをめんどうだと感じている親はいないということです。ほとんどの親たちが自分からやりたくて、喜びを持ってやっています。

その理由は、何より、親がつくった校舎を子どもたちが大切にしてくれるから――。
子どもは自分の親が、たとえば靴箱にペンキを塗ってくれていたということがすごく嬉しいのです。そして親に自然にありがとうと感謝できる子になっていきます。

たとえ苦手なことでも、その姿を子どもが見ていてくれます。終わった後に、「パパ、下駄箱にペンキ塗ってくれてありがとう」と言ってくれたりすると、親として本当に嬉しくなるそうです。ある親御さんは、「学校への関わりを通じて子どもに関われている感じがする」とおっしゃっていました。

戦後すぐの、ドイツでのシュタイナー教育の現場がまさにそうでした。ドイツはDIYの文化が浸透していて、業者に任せることはありません。壁でもバスルームでも全部自分たちでつくるのが当たり前です。だからこそ自分たちの学校をゼロからつくる流れは当然のように起こっていったのです。

親や教師、学校を支えようとする大人が協力して、子どもたちの学びの場をつくっていくというのが世界中に共通しているシュタイナー学校のあるべき姿でもあります。ですから私たちも常にそうありたいと思っています。

親が関わりながらつくっていくのが本来の未来的なコミュニティだ、とシュタイナーは言っていました。誰か一人が指示を出すのではなく、話し合って、ぶつかりながらもある方向を探していくことの大切さを賢治も言っています。親が関わる学校づくりは、未来的な社会の新しい課題と言えるのではないでしょうか。