高等部の校外実習授業

賢治の学校自由ヴァルドルフシューレでは、9年生から始まる高等部において実習授業を取り入れています。育ちゆく若者たちがある一定の期間、実社会の中で集中して働きます。高等部においては、社会の中で働く体験が生徒たちの実践的能力の開花につながるという人間観をシュタイナー教育は持っているからです。それはまさにシュタイナー学校は「温室」だという先入観を覆し、逆にこの教育が日本社会の中でしっかりと生きていける人間形成に基づくことを証明しているといえるでしょう。

9年生 農業実習 「大地と人間のつながり」

人間が生きるためのまさに基本中の基本である「農業」というテーマに9年生では取り組みます。それは「生きる意味」について考えている彼らの心の問いに答える実習であり、大地と結びつくことによって自分の理念をしっかり大地に下ろしていく実習といえるでしょう。実際に生徒たちはさまざまな農家で3週間濃密に自分の労力の限界まで働きます。そこでは人間と本来根本的に結びついている大地、植物、動物と密接に関わる中で現代社会に生きる人間としてどうあるべきかという根本的問いとも向かい合います。

賢治の学校では宮崎県の綾町にある「綾賢治の学校自然農実践場」で寝泊りをしながら綾町で自然の理念に基づいた農業を営んでいる農家で実践を行っています。

10年生 測量実習 「理論と実践とのつながり」

10年生では数学の授業で三角法を学びます。この実習ではこの三角法が土地を測量する際に実践的に用いられることを体験します。理論はわかっていても、実際の現場ではその通りに行かない困難に直面します。そして生徒はクラスで協力して図面を作れるまで取り組んでいきます。理論を実践することをテーマにしたこの年齢の成長にあっている測量実践はさまざまな困難を克服しながらしっかりと自分の思考を行動に置き換えられる人間を育てていきます。

実際今までの実習では生徒たちはさまざまな問題を乗り越えてしっかりとした測量図を作成していきました。 理論だけでは得られない実践的思考を生徒が学ぶことによってより確かな能力が生徒の中から引き出されていきます。

10年生 職業実習 「社会の中の手足となって働く」

10年生の生徒が実際の社会へ一定の期間濃密に関わることにより、体験を通して社会の動き理解するだけでなく、本来人間はお金のために働くのではなく、自分の持っている能力を他の人のために役立たせるのだという根本的人生の意味を体験します。

個々の生徒たちは自分の選んだ各企業団体等に一人で入っていき、濃密な経験をつんでいきます。そこで彼らが体験することは絵に描いた餅だけではなく、社会の中に存在する矛盾や問題にも向き合います。さらに仕事を通してさまざまな大人たちの生き様を見、その中でも理想を持って働く人々からもたくさんのことを学んでいきます。

この集中した期間を通して生徒たちは社会の中でしっかり立てる人間へと成長していくのです。

11年生 社会福祉実習 「人を助けることが自分の力になる」

社会の中で他の人の実践的助けを必要としている人々と共に生活する中で、生徒たちの中に新たな意識が生まれてきます。それは今まで彼らが直接関わることがなかった人々との深いつながりを通してどれだけ彼らからたくさんのこととを学べるのかに生徒たちは気づいていきます。予想もしなかった状態の中で瞬時に自分で判断し対応していく能力や新しいコミュニケーションのやり方を彼らが学び、一見社会の片隅に置かれている人々の中にこそ本当の人間性を学べるのであり、人間であることの深い意味をまさに彼らから学べるのだということに気づいていきます。

この実習を終えた生徒たちは人間的にも一回り大きくなって再び学校に帰ってきます。そして彼らの学ぶ姿勢が実習後、よりいっそう濃密になっていくのです。