12年生卒業劇「クローズ・ユア・アイズ」を終えて

リビングの机に置かれた小冊子。長男の12年生卒業劇台本。家人が出払った中、一人それを繰った。…時は大正、関東大震災後に外国から日本へ戻る船中で若者が亡くなる。しかし彼は起き上がり…台本は少しだけ読んで閉じた。全容を知るのは本番当日まで楽しみにとっておきたい。

4月から毎週一回、12年生の演劇授業が積み重ねられた。他卒業行事の比重が多い時期には小休止しながら。息子は春に国会図書館へ出向き、宿題としてこの台本を選んだ。いくつかの候補の中から選ぶ段において彼は他の作品に一票投じたらしい。満場一致ではなかったが選ばれたこの作品は、しかしこのクラスにぴったり合致したように思える。

演劇集団キャラメルボックス主宰・成井豊さんの作で、2000年秋に同劇団が初演。奇しくもそれは12年生達が生まれた頃。
若者達の探求。主人公は人を探し求める。その友は立身出世や芸術を追い、彼の婚約者は愛を求める。知人女性は夫の愛を探し、被災した女学生は家族との元通りの暮らしを求める。叶うもの、叶わぬもの、現れる違うかたち。それを見守る大人。そして天使。
配役はほとんど他薦で決まったそうだ。1年生からと後半から編入の仲間が同数で溶け合うこのクラス、過ごした総時間は一様ではないが、高等部から卒業年度の濃密な時間共有はお互いをよく知り合うに十分だった。

時代的に何人もの和装を準備する必要があった。生徒達は和服を学内家庭から集めた。事前に生徒の親で詳しい人に和の動きを習ったり、他学年保護者で着付けを得意とする人達に指導を受けたり。本番でも大変お世話になった。
生徒達はその他にも小道具、大道具、音響、チラシ・プログラム作り、メイク・ヘアメイク準備など劇公演に必要な事を、様々な人に支えられながら整えた。


この劇公演の前には秋の卒業オイリュトミー公演と芸術欧州研修があり、日独で計13公演のオイリュトミー発表を行った。その怒涛の経験の後に本格始動した、劇。例年より少ない準備期間、前週のセンター試験、インフルエンザ…気に掛かる要素満載。親は親で公演の運営準備があり、それを平然とした顔で進めながら正直やきもきした。しかし彼らはオイリュトミー公演で培った実践力とクラスのまとまりを最大限に発揮して、きらめく彗星のように卒業劇を演じ切った。本番に強い、とはこの学校の生徒によく与えられる賛辞ではあるが、我が子とその仲間達がそれを本当に目の前でするとは驚きと喜びの他に言い表せる言葉がなかった。

劇が終わり、楽しみにとっておいた全容も翔けて行く時間の彼方に過ぎ去った。涙目の観客の方々が拍手を惜しまずし続けて下さった中の、キャスト紹介。劇での夫婦ペアが可愛らしいポーズを決めた時に、このクラスのこんな光景を見る機会が最後だという思いが突如やって来て寂しさを覚えた。彼らのこれからの道に想いを馳せながら更なる拍手を送った。
担当教師の手厚い指導で劇が完成し、他の教師・卒業生保護者や学内保護者の様々な協力なくしては公演運営が出来なかった。生徒も親も、一人では何も出来ないことを学び、人と支え合い共に生きる喜びを得た。12年の学びの集大成に感謝。

(12年生保護者)