小山郁夫

- 子供の学年
- 卒業生(1期生)、23才(元在校生、12年で転出)
「教育」は親から子どもへの最高のプレゼント
1.出会い
二人の子ども達は、地元の小学校へ元気に通っていました。しかし中学は、教育方針を明瞭に打ち出し、それを学校全体で本当に実践している所へ通わせたいと、夫婦共々考えていました。
そんなとき、妻の知り合いの方の紹介で、初めに見学したのが当時の「賢治の学校」です。
アポを取り、本校の創設者である鳥山敏子先生の授業を拝見しました。そのとき、集中しながらも、実に楽しそうに学んでいる子ども達の様子に本当に感動しました。10年以上大学で教えていたこともあり、余計にそれが印象に残ったのです。
最後に歌を歌ったのですが、それがまた素晴らしかった。10人ほどの子ども達の足が大地にすいつき、声が天までとどいている、そんな感じでした。
帰りの道すがら妻に聞くと、私と同様全く異存はなく、すぐ子ども達の入学を決めました。長男は6年生、二男は2年生での入学です。今だったら、幼稚園から入れていたと思います。
2.学校全体の、初めの印象
本校に関わり、私の中に生まれた印象は、「手作りの学校」というものでした。
まず「言葉」が丁寧で、本当の気持ちがこもっている。例えていったら、先生方の言葉が、愛情満載の「家庭料理」なんです。こころからほめるにせよ、弱点を補強するために強く諭すにせよ、全部に愛情が込められている。
もう1つは、愛情を注ぎつつ子どもを「見抜く力」をどの先生方も持っています。子どもを心底見抜いて、愛情をもって子どもに話しかけたら、それはどんな子どもでも本能的に分ります。そういう言葉こそ、子どもの中に根付くし、さらに成長を促す力になると、自分の子どもを見てつくづく思いました。
3.卒業生の様子―「論より証拠」
卒業生を見て驚くのは、彼らの持っている「深みのある柔軟性」です。12年生の卒論指導を彼らにお願いしました。そのときのやり取りを聞いていると、すぐに突っ込みたくなるような所でも、実に穏やかに聞いている。それから穏やかに反論する。理屈で説得しつつも、同時に、感性で相手が納得するように話しているのです。私も大学では小説や演劇を教えているので、対話術はずっと研究してきましたが、これには正直一本取られました。
また、一期生の長男を見ていると、卒業後の方が更によく勉強しているし、今では英語は読むのも話すのも堪能です。そして、これはどの卒業生にも感じますが、東京賢治シュタイナー学校をとても愛しています。
4.入学を検討している保護者の方たちへのアドバイス
これは努めて客観的にいえば、どこを選ぶにせよ、まずその学校のことを綿密に調べることをお勧めします。それにはその学校を直接訪れてみることが、最もよい方法です。そして、最後は御自身の力で判断することが一番大切ではないでしょうか。そうすれば、あとで後悔しないですから。
私はいつも思うのですが、子育ては人間のできる最高の仕事です。あえていえば、「子育ての尊さ」に比べたら、シェイクスピアだって、モーツアルトだって及ばないと思います。なぜなら、親が注いだ愛情の深さは、その子どもだけしか知らないからです。ほかの人は誰も知らないけれど、自分は子どもに愛を捧げている、そしてこのことはこの子どもしか本当には知らない、そのことが尊いと思うのです。そしてその愛する子どもに捧げられる最高のプレゼントが「教育」です。だからこそ、親としては慎重に、だけど最後は自分で勇気を持って決断してもらいたいと、こころから思います。