松浦信平

- 職業
- 弁護士
- 子供の学年
- 卒業生(6期生)、6年、8年
この学校と出会って
長男誕生とともに日野市に転入してきた私たちは、はじめての子育てを楽しんでいました。東京とはいえ、川が流れ空も広く自然が残る日野。長男は公立幼稚園、小学校へと進みましたが、先生や友だちにも恵まれ、元気に育っていました。ただ、学年が進むにつれて、外で泥だらけになって遊ぶことより、例えばゲームや携帯などの存在が子ども達の間で大きくなるようでもあり、自然にたっぷり触れ、生身で人とぶつかりあいながら育って欲しいと願っていた私は、これから先の子育てについて、少し不安も感じていました。
そんな折、親しい友人がお子さんを通わせはじめたのをきっかけに「賢治の学校」を知り、心惹かれました。例えば、小学校3年生の家造りの授業。好奇心とエネルギーに満ちた子ども達が、目一杯体を使って丸太を運び、土台を作り、その仕組みを学びながら、力を合わせて家を組み上げていきます。また、例えば8年生の卒業劇。思春期の子ども達が、文学に親しみ、力一杯様々な人物を演じ、見事な舞台を作りあげていきます。その年齢の子ども達が心から喜びをもって学べるよう組み立てられたカリキュラムには、目をみはる思いでした。また、当時の教師や親の方々が、柴崎町の校舎を子ども達の学びの場として整えるために力を合わせて働く姿にも、何もないところから何かを生みだそうという力強さを感じました。逡巡の時期もありましたが、「二度とないこの子の少年時代をやっぱりここで過ごさせてやりたい」(「ついでに自分もこの面白い取り組みに加わりたい」)との思いは強まり、長男が小学校4年生の冬に編入を決めました。
それからはや11年。長男は既に卒業して大学生に、幼児部から通う二男、三男は、それぞれ6、8年生になりました。それぞれの少年時代を、彼らはこの学校の学びの中で、本当に豊かに過ごしていると思います。それぞれのテーマをみつけ、まっすぐにそこに向かう様子が見られます。また、いろいろあっても周りの人との信頼関係の中で何かを作っていこうとする姿勢が育っているように思えます。これからの時代を生きていく上で大切にしていってほしいと願ってきたことであり、喜びを感じます。
この学校は親にとっても大いなる学びの場です。何か問題があったり悩ましく感じるとき、誰か任せにするのではなく、その場に責任を負う1人として、私たちも取り組むことになります。多少の困難はあっても、「子どもにとって何が一番大切か」という根本的なところでの共感が大人たちの間にあるので、前向きに出口を見つけることができるように思います。
子育ては人生の中での大事業です。その大事業を、この学校との出会いの中で存分に楽しんでいます。